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目の病気 目の病気の原因や症状、治療法などを解りやすく説明いたします。

緑内障

目の中の圧力が上昇して、目の奥にある視神経を圧迫するため、見える範囲が狭くなったり視力が低下する病気です。

緑内障の原因

緑内障の図解水晶体の周囲にある毛様体から作られる房水は、水晶体に栄養を与えながら水晶体と虹彩(茶目)の間を通り抜け、「前房」と呼ばれる場所に出てきます。そのあと房水は、虹彩の根元にある例えて言うなら、排水口の目皿の役目をする「線維柱帯(せんいちゅうたい)」と呼ばれるところを通り、血管に排出されます。作られた房水と排出される房水のバランスが一定に保たれることにより、目はちょうど良い張りで固さを保っています。

しかし、房水は常に一定に作られているため、なんらかの原因で流れが悪くなったり、排出量が低下すると、バランスが崩れるため目が固くなってしまいます。 この状態を「眼圧が高い」「眼圧が上昇」と言います。

眼圧が高い状態が続くと、目の奥にある視神経の入口にあたる「視神経乳頭」が圧迫されるため、視神経が傷つけられていきます(視神経萎縮)。ほとんどの場合、ゆっくり・ジワジワ進行するので自覚症状がありません。「見える範囲が狭くなる(視野狭窄)」・「視力低下」もゆっくりジワジワとおきてきます。一度傷ついた視神経は再生されることがないので、傷ついた神経が多くなると「失明」を招きます。

眼圧は血圧と同様、個人差・日内変動がありますが、10ミリメートルエイチジーから20ミリメートルエイチジーが正常範囲になっています。

緑内障の種類と症状

開放隅角(ぐうかく)緑内障

このタイプは、房水の排出口の目皿の役目をする「線維柱帯」が目詰まりをおこします。そのため、房水は排出されてはいますが正常より排出量が少なくなるため、徐々に眼圧が高くなります。中年すぎの人に多く見られます。遺伝性の病気ではありませんが、家族に緑内障の人がいれば、検査を受けておくことをお勧めいたします。

ゆっくりと視神経乳頭を圧迫していくため自覚症状がありません。しいてあげれば、「目が重く疲れやすい」「光のまわりに色のついた輪が見える(虹視)」「時々目がかすむ」「見える範囲が狭くなる」などです。ふつう、人は両眼で物を見るため、片眼だけ進行していると気が付くのに遅れることがあります。

最近わが国の40歳以上を対象に住民検診を行ったところ、約3.5%の人が緑内障と診断されました。なかでも、眼圧は正常範囲の10ミリメートルエイチジーから20ミリメートルエイチジーであるのにもかかわらず視神経乳頭が圧迫され、視神経が傷つく「正常眼圧緑内障」が日本人に多く見られると言われています。

閉塞隅角(ぐうかく)緑内障

このタイプは、水晶体と虹彩の間(後房)の房水の流れが悪くなり圧力が上昇するため、虹彩の根元が前に押し出されます。そのため、虹彩の根元が目皿である線維柱帯を塞いでしまうので、房水の行き場がなくなり眼圧が急激に高くなります。中年すぎの女性に多く(男性35%、女性65%)、遠視の人、環境の変化、情動、また瞳を広げる薬(散瞳剤)などの影響を受けることもあります。

急激に眼圧が高くなるため、「急激な視力低下」「眼痛」「充血」「頭痛」「嘔吐」などの自覚症状があらわれます。これを「急性緑内障発作」と言います。発作の程度はまちまちで、繰り返す人もいます。「激しい頭痛・嘔吐」のため、内科や脳外科を受診することもあります。眼圧が高い間に視神経が激しく傷むため、早急に治療(手術)を受けないと「失明」する危険性があります。

先天緑内障

生後間もない新生児、1歳から3歳ぐらいまでの乳幼児におこります。母親のお腹の中にいる胎生期に目の形成異常がおこり、房水の循環が悪くなります。眼球とくに角膜(黒目)が非常に大きくなるため「牛眼(ぎゅうがん)」と呼ばれます。まぶしさや角膜の濁りなどの症状が伴ってきます。

ステロイド性緑内障

いろいろな病気の治療のために、長い間ステロイド剤(副腎皮質ホルモン)を使用した時におこることがあります。

続発緑内障

このタイプは、他の目の病気(虹彩炎・水晶体の異常・眼腫瘍・外傷など)に伴って、眼圧が高くなります。そのため、原因となる病気の治療を同時に行なう必要があります。

緑内障の診断

来院時の問診で「見え方」、「家族に緑内障の人がいないか」、「服用している薬の有無」、「目以外の病気の有無」などを確認し、検査を行います。

視力検査 ランドルト環という黒い輪の切れ目を、どの大きさまで判別できるか調べます。
眼圧測定 目の硬さがどのくらいか調べます。(オートレフ・ケラト・トノメーターなど)
視野検査 目を動かさずにどの範囲まで見えるか調べます。(ゴールドマン視野計ハンフリー自動視野計
隅角検査 前房の広さ、虹彩・隅角などの状態をみます。
眼底検査 視神経乳頭の陥没がどのくらいか、視神経の傷みはどの程度か調べます。(HRTなど)

以上の検査を行っても判断がつかないときは、さらに以下の精密検査を行ない判定します。

眼圧日内変動測定 「1泊2日」入院していただき、3時間ごとの眼圧を測定し、1日の眼圧の変化を調べます。
トノグラフィー検査 房水の排出状態を調べます。
暗室試験 目を閉じて眠らずに暗い部屋に入り、その直前と1時間後の眼圧を測定して比較します。
散瞳試験 瞳を広げる散瞳剤を点眼し、その直前と60分から90分後の眼圧を測定して比較します。
うつむき試験 うつ伏せになり、その直前と1時間後の眼圧を測定して比較します。
飲水試験 空腹時に1000ミリリットルの水を5分以内に飲み、その直前と1時間後の眼圧を測定して比較します。
ステロイド点眼試験 ステロイド剤を点眼し、その直後と点眼後の眼圧を測定して比較します。

緑内障の治療

視神経が圧迫によって傷つかない程度まで眼圧を下げ、残された「視力」「視野」を維持し、「失明」を防ぐことが目的となります。

慢性化傾向の開放隅角緑内障(正常眼圧緑内障を含む)の場合、自覚症状に乏しいので「定期的な診察・眼圧測定・視野検査」を長期間継続し、医師の下で管理していく必要があります。加えて視神経の状態を見ながら薬物療法(点眼薬・内服薬)を用いて、「眼圧コントロール」が必要になります。これでも充分な眼圧下降が得られず、症状が進行していく場合には手術が必要となります。

閉塞隅角緑内障の場合、急性緑内障発作をおこした時には速やかに手術を行います。発作がおきていない時は、やはり薬物療法を行います。先天緑内障の場合は、早めに手術を行わなければなりません。

薬物療法【点眼薬】

医師より処方された点眼薬を、指示された回数を守って点眼することが大切です。近年、多くの点眼薬が発売され、眼圧降下の点眼薬の選択肢が増えてきました。 それぞれ作用の仕方が異なるため、複数の点眼薬を組み合わせて使用することが多くなりました。そのため、患者さまの負担を減らすために、1日1回で済む点眼薬も多くなりました。

薬物療法【内服薬・注射剤】

点眼薬で充分な眼圧コントロールができない時に用います。内服薬は眼圧を下げるのですが、時に、手足の先がピリピリしびれたり、いつもより尿の量が増えたり、胃に負担をかけ食欲不振を招くことがあります。少しの間服用すると軽減していくことがあります。また、血液中のカリウムが減少するので、カリウム製剤を併用します。

視神経の血流改善薬やビタミンB12(視神経側鎖の補修)の内服薬を用いることもあります。

内服しても眼圧が目標値まで下がらない時は、高浸透圧薬の点滴注射を行います。

手術

緑内障の種類により、いろいろな手術法を選択して行われます。

虹彩(茶目)に穴をあける「虹彩切除術」、線維柱帯に癒着した虹彩をはがす「隅角癒着解離術」、目詰まりをおこした線維柱帯を切る「線維柱帯切開術(トラベクロトミー)」で房水の通路や出口の障害を改善し、房水の流れをよくします。新しく房水の流れる通路を結膜(白目)の下まで作る「線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)」という方法もあります。

難治例では、房水産生(作っている)部分である毛様体に「高周波によるジアテルミー凝固」「冷凍凝固」を行い、房水産生を抑制します。

最近では、「レーザー光線」で虹彩に穴をあける「レーザー虹彩切開術」や線維柱帯を広げる「レーザー線維柱帯形成術」で房水の流れを改善し、眼圧を下げる手段も用いられるようになりました。

大塚眼科病院より

眼圧のコントロールつまり「視神経が傷まない目標眼圧」は、視神経の状況により一人一人異なっています。しかし、自覚症状に乏しいため「私は大丈夫」と思われることが多くあります。そのため「放置」したり、「治療の中断」をしてしまう人が少なくありません。また、「点眼薬さえ使っていれば進行しない」と過信していると大変危険です。診察を怠っていると、気がつかないうちに視神経の傷みが広がり、「失明」が忍び寄ってきます。

定期的な「診察(眼圧測定・視野検査・眼底検査など)」を受けることで、視神経の状況によっては点眼薬または内服薬が追加されます。つまり診察は、残された視神経の保護をしていくための「重要な手がかりを得る唯一の機会」と言えます。緑内障の正しい「知識」と「状況に合った適切な時期に行う適切な治療」が、「失明」を遠ざける重要なカギとなります。

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